日本的競争の本質に迫る4


4.日本型ソシオグラマー
  竹内靖雄著(東洋経済刊)
   「日本人の行動文法」−日本らしさの解体新書−より

・ソシオグラマー…人間の社会的行動の文法
         基本原理は「自己利益の追求」と「公共利益との両立」
 バイオグラマー…遺伝的に指定された行動の仕方

<日本型ソシオグラマーの原理>

◆「型」にはまった行動文法を愛用

◆自分本位(自分を中心として周りの状況を見る)

◆利益の追求より不利益の回避(絶望的状況下では自暴自棄、自滅に)

◆状況適応・大勢順応型(受け身、なしくずし、空気)

◆現実からの逃避(先送り、棚上げ)

◆目標としての「夢」(夢の中身や価値でなく、夢を持って頑張ること自体に価値)

◆模倣(学ぶより真似る、横並び)

◆弱い個人主義(自己利益の追求のために、まず集団を利用・依存)

◆相互の攻撃抑制、思いやり(思いやりは利己主義の変形、お節介・世話焼きも)

◆個人に対する弱い責任追及(謝れば許す、誠意を見せる)

◆集団主義(運命共同体、集団のなかでは市場主義は働かず、所属集団最優先)

◆集団利己主義による割拠主義(集団の疑似国家化)

◆集団の集団化(階層化、本末制度、家元制度)

◆競争と協調(個人同士より集団間競争が主流。ユニークなゲーム創設より、誰もが参加しているゲームに殺到。偏差値のような数値化されやすい単一のメリットをめぐる競争が好まれる)

◆利他主義(自己利益の原則に抵触するような本来の利他主義は人間にあっても動物にあっても成り立たない。ボランティアも自己満足の格好の場)

◆思考の節約に熱心(キャッチフレーズ、悟り、意気投合)

◆現世主義(日本的プラグマティズム、現世的御利益)

◆自己閉鎖への退却(根拠のない自己肯定−大和魂、神国等と、根拠のないわけではない劣等意識・自己否定−玉砕、自殺等)

<日本型資本主義のソシオグラマー>

◆管理されたゲーム(明確なルールの下での自由な競争でなく、レフェリー=政府によって指導、管理されたゲーム)

◆「異質性」と「普遍性」(日本企業の特異なやり方のように思われていることの多くは、競争優位を築くことに成功したグローバルな企業に広く当てはまる普遍的で合理的なやり方)

◆強い産業と弱い産業(ハイテク・高付加価値の強い産業が稼いだものを、政府の保護・規制下にある低生産性部門にも分配、高価格を保証することで国民全体がほぼ平等に中流の生活水準を維持)

◆組織の成長(膨張)指向(成長の終焉とともに終身雇用制・年功序列制度は儲からない資本主義の元凶に)

◆系列(閉鎖的な関係)

◆共生(鉄のトライアングルなど閉鎖社会における相互利益交換の関係)

◆談合(閉鎖的な利益分配サークル、共存共栄のソシオグラマー)

◆会社あって国家なし(日本的経営は平等原理と競争原理を巧妙に組み合わせて、報酬と地位の分配に関する「分配の正義」を会社内部で実現する方式)


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